「みちゃだめ。あっちにいって」

新しい月を迎えて

202410pct01心地よい秋風を感じるようになり、嬉しそうに散歩の準備をする子どもの姿がみられます。
夏の間も様々な挑戦や失敗を繰り返し経験しながら、心身共に成長した子どもの姿をとても頼もしく感じます。

~エピソードより~

ある日、ひとりの男の子が、自分の大切なものを仲よしの友だちにみせるため、そっと鞄に入れて登園してきました。
男の子は早速友だちを誘い、みんなから離れたロッカーの後ろで嬉しそうに披露しています。

すると、しばらくして年下の子どもが楽しそうな雰囲気と大切なものの魅力にひきつけられてやってきました。
遊んでいた3人はあわてて箱の中に戻そうとしましたが、引っ張りあいになり箱が破れてしまいます。

すると、1人の子どもが年下の子どもの前を断ちふさぐように両手と両足を広げてたち、
「みちゃだめ。あっちにいって」
と大きな声で叫びました。
さえぎられた年下の子どもは、大切なものを触りたい一心で泣きながら手を振り上げました。

その様子をそばで見守っていた保育者は、振り上げた子どもの手をそっと止めながら「そうだよね。○○くんも遊びたいよね」と代弁しました。
その後、保育者を通して交渉が始まりますが、男の子は「だって、○○組にはみせたくないだもん」と強い口調で主張を続けながら自分の鞄に戻し、しばらく鞄があるロッカー前から離れようとしませんでした。
その様子に、保育者もそれ以上言葉を加えることなく泣いていた子どもの気持ちを受け止めながら別の遊びへ誘っていきました。

このエピソードには、それぞれの子どもに心の動きがあり、そこに寄り添う保育者のまなざしがあります。
保育者が「保育園にはおもちゃを持ってきてはいけません」と伝えてしまえば、子ども同士の小さなトラブルは防げたと思います。
しかし一方で、この経験を通して子どもは多くのことを感じたでしょう。
保育園は、子どもたちが安心して多くの経験を積んでいく場所でありたいと願っています。

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